2020年7月8日
栃木の繭とお蚕さま
こんにちは。長島繊維です。
大雨の被害のあった地域の皆さまはご無事でしょうか?
ここ数年は異常気象が「異常」ではなくなってしまいましたね。
被害に遭われた皆さまへ心よりお見舞い申し上げます。
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さて、この時期は夏の繭作りの最盛期です!
※虫が苦手な方はこの先はちょっとご注意くださいね※
こちらは栃木県小山市にある養蚕農家さんの桑畑。
お蚕さまのエサになる植物です。
この時期はぐんぐん伸びて、毎日毎日桑刈りします。
むしゃむしゃ・・・むしゃむしゃ・・・
もりもり桑の葉を食べていますね。こちらが「お蚕さま」です。
いわゆる「蛾」の一種である「カイコガ」の幼虫ですが、古来より養蚕文化の根付いた日本では、唯一「家畜化された昆虫」と呼ばれています。
日本には稲作と共に伝わってきたとされる養蚕文化ですが、なんと古事記にも記述が見られ、長い歴史を日本人と共に生きてきたことが分かりますね。
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数日間桑の葉を食べ続けたお蚕さまは、だんだんと白い身体が黄色く透き通って見えます。
これが「もうすぐ繭を吐きますよ」=営繭(えいけん)の合図となり、
繭を作る部屋、いわゆる「蚕室」へ。これを上蔟(じょうぞく)といいます。
一つ一つ、お部屋が区切られている箱が「回転蔟(かいてんぞく)」。
ここにお蚕さまが入り、自分のお部屋を見つけたら繭糸を吐いていきます。
なぜ「回転蔟」?というと、お蚕さまは上へ上へ登る習性があります。
上に登りながら、自分のお部屋を見つけられなかったお蚕さまたちがみんな一番上まで登ると、その重みでくるっと回転して上下が逆になります。そうすると、また上へ上へ自然と登っていくという仕組みです。すごいですよね。
一つのお部屋の中で一つの繭が出来ていきます。
キラキラと煌めく、細く繊細な繭糸。神秘的です。
2階が「蚕室」になっている、日本の伝統的な農家の建築様式です。
なんと、いつもお世話になっている養蚕農家の福田さん宅は、江戸時代後期に建てられたそうです!立派な土間が残っていて、歴史を感じます。
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そして出来上がった繭はいよいよ出荷の日を迎えます。
選繭台(せんけんだい)にざざぁっと繭を入れ、形や大きさ、音、色など、
繭の出来具合を確かめます。
きれいですよねぇ!
この少しくびれのある繭は、日本古来の在来種である「小石丸」を改良した
ブランド繭「改良小石丸」です。対して中国品種は丸い俵型をしています。
このあと、繭たちは群馬の碓氷製糸さんへ。そこで美しい生糸に生まれ変わります。
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長島繊維では5年ほど前から、「100%栃木の繭」から着物を作るプロジェクトを行っております。純国産絹の生産量は、昭和~平成と年々減少し、令和の今ではほぼ絶滅危惧種の動物のような、貴重な存在となってしまいました。
しかし、国産の絹糸が出来るまでの過程には、昔からの日本の知恵や文化もぎゅっと詰め込まれているのです。消えてしまったら、もう過去のものになってしまう「純国産の絹」。微力ながらも、商品を生産することで、少しでも多くの方に知って頂けたら幸いです。
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